大阪地方裁判所 昭和62年(わ)2781号 判決 1991年3月07日
主文
被告人Aを懲役四月に、被告人Bを罰金一〇万円に各処する。
被告人Bにおいてその罰金を完納することができないときは、金五〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。
被告人Aに対し、この裁判確定の日から二年間その刑の執行を猶予する。
訴訟費用中、証人神庭将実、同浅田孝一及び同北代哲三に関する分は被告人Bの負担とし、証人C(第三ないし第五回及び第二四回公判期日分)、同D、同蔭山光男、同深田照雄、同岡村政之、同繁田修、同孫磨行及び同李マリジャに関する分はその二分の一ずつを各被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
第一 被告人A(以下、「被告人A」という。)は、昭和六二年六月二六日、在日韓国青年同盟(以下、「韓青同」という。)大阪府本部委員長として、韓青同のほか在日韓国民主回復統一促進会議及び在日韓国学生同盟の構成員ら約六〇名と共に、大阪市南区三津寺町一二番地(旧表示)所在の駐大阪大韓民国総領事館(以下、「韓領」という。)に対し韓国の民主化等を申し入れる集団行為に参加し、その行動指揮を担当していたものであるが、同日午後五時前ころ、韓領東側の正面出入口前において、右韓青同等の集団と同集団の韓領内への侵入を阻止するため右出入口を背にして横一列に並んで警備に当っていた警察官らとが対峙した際、右警備に従事していた警察官らのうちの大阪府南警察署警ら課第一係巡査C(当時三六歳)に対し、同人の身体を手や上体で押し、同人の右肩を左手で掴んで引っ張って暴行を加え、もって同巡査の公務の執行を妨害したものである。
第二 被告人B(以下、「被告人B」という。)は、前記の韓領に対する韓国の民主化等を要求する集団行動に韓青同の構成員として参加したものであるが、同日午後五時三〇分ころ、同区難波五丁目一番六〇号(旧表示)所在の株式会社高島屋大阪店北東前歩道上において、一〇数人の韓青同の構成員らと警察官が揉み合っていた中から前屈みになって逃れ出てきた前記C(以下、「C」という。)に対し、右手拳で同人の後頭部及び顔面を殴打し、さらに、紙袋様のもので顔面を殴打する暴行を加えたものである。
(証拠の標目)<省略>
(争点の判断)第一、一<省略>
二 Cの職務執行の適法性
弁護人らは、判示第一記載のとおり、被告人Aらが韓領に対し韓国の民主化等を申し入れようとした際に、Cを含む警察官らは、韓領出入口前に阻止線を形成して、韓青同等の集団の代表者の韓領受付への接近を妨害し、要件も聞かず取り次ぎもしなかったのであって、このようなCら警察官の対応は、請願権に対する不合理かつ偏頗極まる暴圧であり違憲の職務執行であるし、取り分けCは、被告人Aに対し様々な暴行を振るったのであるから、判示第一のCの警備活動は適法な職務の執行とはいえない旨主張する。
先ず、関係各証拠によれば、南警察署は、従来より、韓領の領事からの警備要請を受け、韓領内に設けられた警察官詰所に警察官を派遣して韓領の警備警戒に当たっていたところ、前記のとおり、本件で警備活動に当たったCら七名の警察官も、当時右警察官詰所にいたが、同警察署からの電話指示により判示韓青同等の集団行動の警備に当たることになったことが認められ、右Cら七名の警察官の判示警備活動は、警察の責務として、右集団行動に対し、外国公館である韓領の施設の平穏、領事館業務の無事運営を保護することにあったものと言うべきである。ところで、関係各証拠によれば、前記の電話指示によりCら七名の警察官が、韓領東側正面出入口側の歩道との境界沿いに約一メートル間隔で横一列に並んだところ、まもなく、ゼッケン、鉢巻を着用した被告人Aらを含む韓青同等の集団が、小走りで韓領前にやって来て、たちまちその人数が増えて六〇名位になり、横断幕を広げ、一団となって右警察官らに詰め寄って対峙し、シュプレヒコールを上げたり、腕を斜め上に突き出し、口々に「中に入れろ。」「領事に合わせろ。」などと叫び、前列の者が右警察官を押すなどしたため、右警察官らは間を詰めて南端の韓領出入口前に横に並んで立ちはだかって阻止線を形成し、右集団と対峙したが、右集団はなお右警察官らに迫ってきたこと、右警察官らの北側でも、右集団は横断幕を広げたまま歩道から韓領敷地内に入り込んで韓領出入口前の警察官らを取り囲むようにしていたことが認められる。右認定の事実によれば、客観的状況として、右集団が韓領の施設内に乱入して、施設の平穏が害され、領事館業務が妨害される恐れが看取される状態であったと認められるから、前記認定のように韓領出入口前に並んで阻止線を形成して全く右集団の者らを韓領施設内に入れないようにした右Cら七名の警察官らによる措置は、前記の警備活動として正当であって、弁護人らが主張するように、被告人Aらの判示集団行動の目的が韓領に対する請願権の行使であり、右集団の中に「代表者を通してほしい。」とか「領事館に取り次いでほしい。」などと言った者がいたとしても、警察官の職務の執行として違法とは言えない。
また、被告人Aは、公判廷において、被告人Aらの集団とCら警備の警察官とは五〇センチメートルないし一メートルほど離れて整然と対峙していたのに、Cは一方的に被告人Aら右集団の者に対して暴行を加えていた旨供述しているが、前掲各証拠中の関係各写真からもこれが事実に反することは明らかである。ただ、前記捜査報告書の抄本添付の写真二六A及び押収してある黒白写真一枚によれば、Cら警備の警察官が両手で対面する右集団の前列の者の身体を押す場面があったことが認められるが、右各写真によれば、これは、右集団が前記のとおり警備の警察官に押したり、迫ったりしている最中のことであり、Cら警備の警察官は、韓領敷地内の縁石から歩道上に足を踏み出すには至っておらず、Cら警察官らの右行為は、その場に踏み止まるのに、右集団が押したり迫って来るのに対応して押し返しただけのことと認められるから、Cら警備の警察官の右行為は、いまだ積極的な実力行使には該らず、前記状況下での警備活動として許容される限度の行為であって、これによりCら警備の警察官の職務執行が違法であったとは言えない。
三 被告人Aの行為の可罰的違法性
弁護人らは、Cが、被告人Aらの韓領への請願権を蹂躙し、そのうえ被告人Aに対し様々な暴行を振るいつづけたことを考慮すると、被告人Aの判示行為には可罰的違法性がない旨主張するが、その前提事実が認められないことは、前記のとおりであって、判示の被告人AのCに対する暴行の程度に照らしても右主張は採用できない。
第二 被告人Bに関する判示第二の事実について
一 公訴事実
判示第二の事実に対応する公訴事実の要旨は、被告人Bは、ほか多数の者と共謀のうえ、判示第二記載の日時、場所において、被告人Aを判示第一の公務執行妨害の被疑者として緊急逮捕しようとした巡査Cに対し、同人を取り囲み、同人にしがみついて突き押し、制服を引っ張り、その頭部、顔面等を手拳や鞄様の物で殴打するなどの暴行を加え、加療約五日間を要する右眼及び周囲打撲傷、左後頭部打撲血腫、前胸部、右上腕内側手関節部挫創、右前腕挫傷等の傷害を負わせ、もって公務執行妨害罪とともに傷害罪を犯したというのである。
二 公務執行妨害罪の不成立
前掲関係各証拠によると、Cが公訴事実記載のとおり被告人Aを緊急逮捕しようとしてその逮捕行為に着手したことは認められるが、当裁判所は、Cの右逮捕行為は違法な職務執行であるから、これに対して公務執行妨害罪が成立する余地はないと判断したので、以下の判断の都合上、先ずこの点について説明する。
前掲関係各証拠によれば、次の事実が認められる。被告人Aを含む韓青同の構成員等の判示集団行動の参加者らは、韓領前での行動の後、判示の高島屋前に集まって解散集会をし、その終了後は路上でたむろしたり、帰りかけたりしていたが、警備の警察官がその場面をビデオ撮影していることに気づいた数人の右集団行動に参加した者らが、そのビデオカメラのレンズを手でふさぐなどして警察官の右ビデオ撮影に抗議した。被告人Aは、これを見て、そのビデオカメラと右抗議をする者らとの間に入り、その者らの方を向いて警察の挑発に乗らないようになどと言いながら両手を上げて右抗議行動を制止した。一方、Cは、上司が決めた手はずに従って判示第一の公務執行妨害罪の犯人である赤色ポロシャツを着た男、即ち被告人Aを緊急逮捕するために韓領前から移動してきて判示高島屋前に小走りで近付いて行ったが、右高島屋前にいた前記集団行動の参加者らの中に赤色ポロシャツを着た男、即ち被告人Aが前記のように他の者らの抗議行動を制止しているのを認めるや、そのまま一人でその背後に歩み寄り、いきなり「これや。」と言いながら、被告人Aを背後から羽交締めにして、右に振っておさえつけるような動作をして被告人Aの逮捕に着手した。その途端、回りにいた前記集団行動の参加者らが口々に抗議の声を上げるなどして被告人AとCを取り囲み、両名を引き離そうとし、周囲にいた何名かの他の警察官はこれを制止しようとして、これら多数人が入り乱れて揉み合い、現場は騒然となった。以上の事実が認められる。
ところで、Cは、右のように被告人Aを羽交締めした際に「逮捕する。」と言ったと思うと証言し、また、証人谷田康熙は、Cはその際「こいつや、パクる。」と言ったと証言するが、Cの右証言自体から、右のように「逮捕する。」と言ったことについてはC自身にも確信がないことが窺われること、また、証人谷田は、判示第二の事件発生時から約三年も経過してから検察官が請求した証人であって、その記憶の正確性には疑問があること、そして、なによりも、警察官が当時の状況を終始撮影した前掲のビデオテープではCの「これや。」と言う声が聞こえるだけで、「逮捕する。」との声は全く聞けないことに照らすと、右両名の証言はいずれも信用できず、証拠上、Cが被告人Aの緊急逮捕行為に着手した際、逮捕する旨を告げたとは認定できない。
以上のとおりで、Cは、本件緊急逮捕に際して、緊急逮捕の要件である被疑事実などの理由の告知はおろか、逮捕する旨さえ告知したとは認められないのであるから、右緊急逮捕行為には重大な違法があるというほかなく、右逮捕行為は公務執行妨害罪による保護に価しないことは明らかであり、前記公訴事実中の公務執行妨害罪は、その余の点について検討するまでもなく、成立しないといわねばらない。
三 被告人B自身の暴行の認定
被告人Bは、公判廷において、判示第二の場面で、Cに対し右手拳を一回突きだしたら、Cの前頭部辺りに当たり、その右手を元の位置に返そうとしたとき、もう一度右手が偶然その男に当たった。左手は紙袋を持っていたが、その紙袋でその男を叩いたことはない旨供述し、弁護人は、被告人Bが右手拳を突きだしたのは一回だけであり、その後被告人Bの右手甲や前記紙袋がCに当ったことがあったとしても、それは被告人Bが体勢を元に戻そうとした際に偶然当ったものに過ぎず、被告人Bは故意にCに暴行を加えたものではない旨主張する。
しかしながら、前記ビデオテープによれば、被告人Bは、前記認定の多数人が入乱れての揉み合いの中から前屈みで歩み出てきたCに対し、右手拳でおもいっきり左後頭部を殴打し、その右手を一度自分の方に戻してから、もう一度Cの顔面を殴り、すぐに左手を突き出して、その手に持っていた紙袋様の物でCの顔面付近を叩いていることが認められ、その態様からして、右の被告人BのCに対する最初の一撃はもちろん、その後の右手拳でCの顔面を殴り、左手に持った紙袋様の物でCの顔面付近を叩いた行為についても故意に暴行を加えたものであることは明らかであって、右ビデオテープから判示第二の被告人Bの暴行の事実は優に認定できる。
四 共犯の否定と傷害罪の不成立
前記公訴事実では、被告人Bは、ほか多数の者と共謀のうえ、Cに対し、判示第二の暴行の他に、Cを取り囲み、同人にしがみついて突き押し、制服を引っ張るなどの暴行も加えたとされているところ、関係各証拠によれば、被告人B自身がCに対して加えた暴行は、判示第二記載の暴行のみであるが、Cは、前記認定のとおり被告人Aを緊急逮捕しよとして羽交締めした途端、回りにいた前記集団行動に参加した者らに取り囲まれ、これらの者からも被告人Aの奪還のため公訴事実にいうような暴行を受けたことが認められる。
しかしながら、前記認定のとおり、Cが被告人Aを緊急逮捕しようとして羽交締めした行為は、違法な職務執行であるから、その周囲にいた前記の集団行動参加者らが、右逮捕から被告人Aを奪還しようとしてCに加えた右暴行については、相当性の限度も超えておらず、正当防衛が成立すると言うべきである。なお、前掲ビデオテープによれば、Cを取り囲む者の人数は、警察官も含めて瞬く間に増え、被告人Aの姿は揉み合っている多数の集団の中に隠れて全く見えなくなってしまったことが認められ、このような揉み合いの中でCに対し暴行を加えた者の中には、防衛の意思がなかったり、侵害の急迫性がなくなった後に右暴行に加わった者もいたかもしれないが、証拠上、反対に、右揉み合いの中でCに暴行を加えた者らのすべてが、Cの被告人Aに対する違法な逮捕行為が止まないうちに防衛の意思で行動したというのも否定できないから、これらのすべての者の行為について正当防衛の成立を否定することは出来ない。そうすると、そもそも実行行為者に違法性の認められない行為について、他の者が共犯者としてその責任を負う謂はないから、右の揉み合いの中での他の者らのCに対する行為について、被告人Bを共犯に問う余地はない。
次に、Cの証言及び医師辻尚司作成の診断書によれば、Cは、被告人Aを羽交締めしてから以降に公訴事実記載の傷害を負ったこと、右傷害のうち、右眼及び周囲打撲傷、左後頭部打撲血腫については、被告人Bの判示第二の暴行によって生じる可能性があることが認められる。しかしながら、Cは、前記の多数の者に囲まれての揉み合いの中ででも何十回もけられたり、頭や体を殴られるなどかなりの暴行を受けたうえ、左後頭部を殴られたことも二回あるが、そのうちの一回は被告人Aから手を離す前に殴られた旨証言しているから、前記の右眼及び周囲打撲傷、左後頭部打撲血腫の傷害についても、必ずしも被告人Bの判示暴行によって生じたものであるとは認定できない。
五 正当防衛ないし誤想防衛の不成立
被告人Bは、公判廷において、判示第二の犯行に及んだ経緯について、前記韓領前での集団行動を終えて、判示高島屋前へ移動中に警察官が被告人Bら右集団行動の参加者らに対し通行を妨げたりカメラで撮影したりするのを見て、警察官が被告人Bらの集団の解散時の行動を妨害しようとしていると感じていたところ、右高島屋前における解散集会が終った後、韓青同兵庫県本部の代表者として同本部からの参加者に対し、集約の挨拶をしていた際に、後ろの方で揉めているような状況を感じたので、そちらの方を振り返ると、警察官と前記集団行動に参加した者ら一〇数人が団子状になって揉み合っていたので、制止しなければならないと感じ、その方向に歩み寄り、揉み合っている集団のところに来たときに、一人の警察官(Cのこと)がその集団の中からはじき出されるように前屈みで飛び出して来たのを見た途端、同人が前記集団行動に参加した者らの解散時の行動を妨害すべく挑発を繰返しているものと思い、その瞬間思わずCに対して手を突き出してしまった旨供述し、弁護人らは、右供述に副って、被告人Bは、前記集団行動の参加者らと警察官らが揉み合っているのを制止し、Cら警察官の解散行動に対する妨害行為、すなわち右集団行動参加者らの行動の自由に対する急迫不正の侵害行為を止めさせようと思って、Cに対し右手を突き出したのであるから、被告人Bの判示第二の行為については、正当防衛ないし誤想防衛が成立する旨主張する。
しかし、関係各証拠によれば、そもそも、判示第二の犯行当時、Cを含む警察官らが被告人Bらの前記集団行動参加者らの解散行動を妨害しようとしていた事実は全く認められないから、判示第二の被告人Bの犯行について弁護人らの主張する正当防衛が成立する余地はない。また、被告人Bの公判廷での供述、その他関係各証拠によれば、被告人Bが、警察官らが解散行動を妨害していると思ったという根拠は、単に、前記集団行動参加者らが韓領前から高島屋前へ移動中に、警察官がその通行を妨げたりその状況をカメラで撮影したりするのを見て、警察官が被告人Bらの集団の解散行動を妨害しようとしていると感じていたからであると言うにすぎず、被告人Bは、判示高島屋前において警察官が数人いたことに気づいてはいたが、既に前記集団行動参加者らの解散集会も終了していて、前記の警察官との揉み合いがなぜ起こったのかも全くわからずに、ただ警察官がその揉み合いの中から前屈みになって飛び出してきたのを見て咄嗟にその警察官のCに手を出したものと認められ、被告人B自身もなぜCに手を出したのかは自分でも良く分からないとも供述しているのであるから、被告人Bが、Cが前記集団行動参加者らの解散行動を不正に妨害しようとしていると誤想してその防衛のため判示第二の行為に及んだとは、到底認められない。
なお、前記認定のとおり、前記集団行動の参加者らとCら警察官が揉み合った原因は、Cの被告人Aに対する違法な緊急逮捕行為にあるが、関係各証拠によると、被告人Bは、被告人AがCに羽交締めされて逮捕されかけた場面を見ておらず、判示第二の犯行当時、Cの違法な逮捕行為から被告人Aを奪還しようとの意思は全くなかったことが認められるので、被告人Bの判示第二の犯行については、Cの被告人Aに対する違法な逮捕行為との関係ででも、防衛の意思によらない行為であるから正当防衛の成立する余地はない。
六 可罰的違法性の存在
弁護人らは、被告人Bの判示第二の犯行は、被害者であるCの違法な緊急逮捕行為が原因となって発現されたものであり、被告人Bが手拳を突き出したのはただ一回だけで執拗でなく、軽微であることからすれば、右犯行は可罰的違法性を欠く旨主張する。
しかしながら、前記のとおり、被害者であるCの違法な緊急逮捕行為が右犯行の遠因となっているとしても、被告人Bの暴行の態様は、弁護人主張のように軽微なものではなく、判示第二記載のとおりであって、関係各証拠によれば、特に右手拳による最初の殴打はかなり強烈であったと認められることからすれば、判示第二の犯行が可罰的違法性を有することは明らかである。
七 結論
以上のとおりで、前記公訴事実については、判示第二の限度で有罪である。
(法令の適用)
被告人Aの判示第一の所為は刑法九五条一項に、被告人Bの判示第二の所為は同法二〇八条、罰金等臨時措置法三条一項一号にそれぞれ該当するところ、各所定刑中判示第一の罪については懲役刑を、判示第二の罪については罰金刑をそれぞれ選択し、判示第一の罪所定刑期の範囲内で被告人Aを懲役四月に、判示第二の罪所定金額の範囲内で被告人Bを罰金一〇万円に各処し、被告人Bにおいてその罰金を完納することができないときは、刑法一八条により金五〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、被告人Aに対し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間その刑の執行を猶予することとし、刑事訴訟法一八一条一項本文により、訴訟費用中、証人神庭将実、同浅田孝一及び同北代哲三に関する分は被告人Bの負担とし、証人C(第三ないし第五回及び第二四回公判期日分)、同D、同蔭山光男、同深田照雄、同岡村政之、同繁田修、同孫磨行及び同李マリジャに関する分はその二分の一ずつを各被告人の負担とする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官米田俊昭 裁判官白石史子 裁判官井上一成)